2023年 2月 3日
横浜グリーン購入ネットワークの会員企業を紹介します。取材は記者の春名さんです。
第4回目はのダイイチ様。「ユニフォームを通じて働きがいを」企業応援プロジェクトが好評のユニフォームメーカーです。
ユニフォームを通じて働く人々をスター選手にする―。そんな目標を掲げ、SDGsの取り組みを進めているのがユニフォームの企画・製造・販売のダイイチ(横浜市中区宮川町)だ。環境や社会に配慮したユニフォームの製作や販売はもちろん、回収した服から服を作る循環型リサイクルまで取り組んでいる。花本高志社長に話を聞いた。
始めにダイイチの歩みを振り返る。
ダイイチは1951年、創業者の鈴木米蔵、喜代夫妻が「洋裁店すずや」を開店したのが始まり。喜代さんは文化服装学院で学んだ経験を生かし、千葉県木更津市に小さな洋裁塾を開いた。米蔵さんは、依頼を受け、木更津から横浜まで来て、白衣を売り歩いていた。
その後、横浜に拠点を移し、白衣の製造販売を手掛けるようになり53年、第一被服有限会社を設立した。時代は衛生向上のため、理容店や飲食店などへと白衣ユニフォームが広がりはじめた頃だった。
ある日、店舗のショーウィンドーでユニフォームを着たマネキンを見た在日米軍の将校クラブ総支配人が訪ねてきた。「将校クラブのウエートレスのユニフォームはアメリカ製で値段も高い。日本で同じようなものが作れないか」と。
スタイルブックの写真を元にデザインを起こし、ユニフォームを作り上げた。その仕上がりを気に入ってもらい、新しい仕事につながっていった。お客様と真摯に向き合い、課題をクリアできたからこそ、喜んでもらえたのだろう。
戦後の激動のなか、横浜の地域とともに歩み70年に社名を「ダイイチ」に変更。お客様のことを「第一」に考える精神は引き継がれていった。
「強制労働はないか」「労働、安全衛生に関する方針は」。花本社長は5年ほど前、顧客企業から海外の製造委託工場に対してそんな問いを投げ掛けられた。
商品が生み出されるまでの労働環境を重視する世界の潮流が始まっていた。「これから取引していくためには、顧客の言う通りにしていくべきだ」。SDGsに取り組むきっかけとなった。
さらにSDGsを「自分たちの経営に生かすもの」として考え始めたのが3年前だった。
リサイクル事業の「JEPLAN」=旧日本環境設計=(東京)が手掛けるシステム「BRING」を使って、回収・リサイクルに取り組んでいた。
貸与年数3年ぐらいで廃棄されるユニフォームを回収、リサイクルして再度市場に循環させるもので、回収量は毎年30%~40%ずつ伸びている。
また、公正取引を証明する「フェアトレード認証」や繊維の安全性と信頼性を証明する「エコテックス認証」などを取得した商品も増加。使用済みのペットボトルから生まれる再生ポリエステル繊維やサトウキビなど植物由来繊維など選択肢も増えてきた。
同社は、かながわSDGsパートナーやヨコハマ型地域貢献企業で最上位クラスを取得した。
このように個別の取り組みは行われていたが、経営実装へ拍車を掛けることになったのが、2020年2月、社内に立ち上げた「インパクトマネジメント」プロジェクトだ。
「ダイイチのユニフォームを着用する全ての人々が誇りと喜びを持って働く」をビジョンに定め、それを実現するための道筋を、バックキャスティングで示していった(図を参照)。
働く人の誇りと喜びを、ユニフォームでどういう効果を出せば実現できるか。チャート図にして書き出していった。
「環境に貢献する」「良い人材が集まる」「企業の持続性が高まる」「仕事への意欲が高まる」…。そのためにどうすれば良いか。
PDCAサイクルも重視し、年1回、アンケートを10社ずつ取り、課題や改善点を洗い出している。
同社は、デザイン性や機能性に優れたユニフォームの普及自体をSDGsに位置付ける。そこで始めたのが、横浜市内の企業を撮影する企業応援プロジェクトだ。
ユニフォーム姿で働く人たちに焦点を当て、生き生きとした姿をプロのカメラマンがこだわりの技術で撮影した作品を紹介する企画。
企業からは、日々の業務を改めて見直す機会になったと好評で、「仕事への誇りを持ってもらえる」「職場の一体感が増した」との声が寄せられている。
これまでに五つの企業で撮影しており、撮影した写真は求人広告などで各社に活用してもらっている。
また、いじめ反対の世界的な活動「ピンクシャツデー」にも賛同。2月の最終水曜には従業員全員がピンクのTャツを着用して、いじめ撲滅を訴える。
「カナダでピンクの服を着た男子高校生がいじめられたのが、この活動のきっかけ。衣料を扱っている会社として、見過ごすわけにはいかない」と花本社長は話していた。